刻印は責任の証し

 刻印は、鋼に印鑑のように逆さに銘などを刻み、焼入れした物のことだと思います。
まさに鋼の印鑑そのものですが、私どもは、棒状になったそれの後ろ側を鎚で打って
写った柄を「刻印」と言っています。

「落款」とか「銘」とか、あるいは「署名」「サイン」と同義でしょうか。

錫の場合、製品の底に当たる部分に、刻印を打ちます。
屋号であったり、作者の号であったり、素材名を入れたりします。

書や絵画の場合、大抵これで完成というところで最後に「落款」や「サイン」を入れますね。
錫の場合は途中の工程で、先に「刻印」を打っておかなければなりません。

これってなんか変な気がしますよね。よし終わり!ってとこでボンと押すのが決まりがいい。

いつだったかテレビ取材で、刻印打ってそこで「完成です」って言って下さいと言われました。
刻印打って完成じゃないのに無理やり言わされて、何か嘘付いてるみたいでやだなあと。
後で何度繰り返し見ても、なんか気持ちが入っていない感じがアリアリとしてねえ。

良く考えれば、いつの間にか慣らされちゃったというか、確かに最後にボン!の方がいいわあ。
錫の場合も、完成してからよしっ!てんで、刻印打ってると思っている人多いでしょうね。

でも、途中でだからって、決していい加減に「刻印」打ってないですよ。
やはり、屋号や号が入りますので、どこで作ったかが一目瞭然でしょ。
私どもとしては、一貫してこの工房内で手作業で作り上げたものということ、
その時に出来ることを確実にひとつひとつ丁寧にこなして仕上げるということ、
もろもろそういった責任の証しとして「刻印」を打っているんですね。

ですから、最後によしっ!ボンではないんですが、ご勘弁願いたいものです。


ところで先代の光山は、刻印を2つ使い分けていました。「本錫・錫光」と「光山造」です。
前者は伝統的な定番商品、後者は自ら考案した商品や特注品です。
品質に差はありませんでしたが、若干の思い入れの差はあったのかもしれません。

現在基本的に「光山造」は、封印しています。馴染みのお得意様であんたもう光山で作ってよ
という場合のみ、工房に掲げる先代の写真を仰ぎ見ながら作らせていただくのみです。

そして実は最近新しい「刻印」を作製しました。

HPのリニューアルやロゴデザインでお世話になったコルザデザインの野原さんに
お願いして刻印用のものをおこしてもらい、それをもとに作りました。

懐素という8世紀は中国唐代の書家の文字で錫と光が回転したデザインになっています。

「光山造」は基本的に暫くは封印。
「本錫・錫光」は、伝統的な定番商品。
そして新しく作った「錫光マーク・suzukou」は、今の生活に合うような商品。
といった大雑把な使い分けをしていこうかと思っています。








プロフィール

錫光は、ロクロ挽きで酒器・茶器等の錫(すず)製品を作る工房です。地金の仕入れから鋳込み・ロクロ挽き・ツチメ打ち・絵付け・漆塗りなど一貫した手作りにこだわる伝統工芸品を製造販売しています。
このサイトは、新着情報や日々感じたことなどを気まま勝手に綴る、錫光のオフィシャルブログサイトです。

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